日本では,Ca拮抗薬の使用に伴い脳心血管疾患死亡率が低下してきた。 また,現在でも医師の60%以上がCa拮抗薬を降圧薬の第一選択として使用しているにもかかわらずevidenceに乏しかったが, 日本人対象の重要な知見が得られてきた。その1つが2000年,第23回日本高血圧学会で発表された NICS-EHの最終結果である。
NICS-EHは, 持効性Ca拮抗薬・塩酸ニカルジピン徐放剤と利尿薬トリクロルメチアジドで老年者高血圧の脳心血管合併症予防効果を比較した 無作為二重盲検群間比較試験である。
本試験は,世界的にevidenceの確立した従来薬・利尿薬と新規降圧薬Ca拮抗薬の合併症予防効果を初めて比較した大規模試験であり, 同時にわが国の高血圧長期治療研究では初の多施設二重盲検比較試験である。
本試験結果は1999年にHypertension誌に掲載され(Hypertension 1999;34:1129-33), 2000年には第10回欧州高血圧学会学術集会でも発表され,注目されている。
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| 目的 | 老年者高血圧の脳心血管合併症,動脈硬化危険因子などに対する持効性Ca拮抗薬と利尿薬による長期治療効果を比較検討すること |
| 試験デザイン | 多施設二重盲検群間比較試験 |
| 対象 | 収縮期血圧(SBP)160−219mmHg,拡張期血圧(DBP)115mmHg未満の60歳以上の高血圧患者 |
| 方法 | 塩酸ニカルジピン徐放製剤40mg/日(分2)投与群をN群,トリクロルメチアジド2mg/日投与群をT群とした。 |
| 追跡期間 | 5年間 |
| エンドポイント |
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- 総症例数は429例(N群215例,T群214例)であったが,プロトコール違反などにより15例が除外され, 評価対象は414例(N群204例,T群210例)であった。
- 患者背景ではT群に女性が有意に多かったが,年齢,血圧値,降圧薬服用歴,飲酒率,喫煙率, 総コレステロール値などでは両群間に有意差は認められなかった。
| *p<0.05 (Hypertension 1999;34:1130 より一部改変) |
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| N群 | T群 | ||
| 症例数 | 204 | 210 | |
| 年 齢(平均) | 69.7 | 69.9 | |
| 性(女性)(%) | 60 | 74* | |
| 血圧平均 | SBP(mmHg) | 171.9 | 172.6 |
| DBP(mmHg) | 94.2 | 93.4 | |
| 収縮期高血圧(%) | 25 | 25 | |
| 降圧薬前治療(%) | 56 | 65 | |
| 喫 煙(%) | 11 | 9 | |
| 飲 酒(%) | 13 | 8 | |
| 総コレステロール(mg/dL) | 205 | 214 | |
| 心電図左室肥大(%) | 31 | 26 | |
- 血圧は試験期間中を通じてN群で172/94mmHgから147/81mmHgへ,T群で173/93mmHgから147/79mmHgへと,同様に低下した。
- 脈拍数は両群ともに大きな変動は認められなかった(N群73/分→76/分,T群73/分→72/分)。
(Hypertension 1999;34:1130 より一部改変)
- 脳心血管合併症の発症はN群21例(10.3%),T群18例(8.6%)
- 脳心血管合併症以外の合併症の発症,副作用,血圧コントロール不良を合わせた副次イベントの発生は,N群31例(15.2%),T群47例(22.4%)
- 医学的イベントの発生はN群52例(25.5%),T群65例(31.0%)
◎ いずれも両群間に統計学的有意差は認められなかった。
| (Ther Res 2001;22:269) | ||
| N群 | T群 | |
| A.脳心血管合併症(1+2+3) | 21(10.3%) | 18(8.6%) |
| 1.脳血管障害 | 12 | 8 |
| 2.心疾患 | 6 | 9 |
| 3.その他の血管疾患 | 3 | 1 |
| B.副次イベント(4+5+6) | 31(15.2%) | 47(22.4%) |
| 4.脳心血管以外の合併症 | 14 | 16 |
| 5.副作用 | 6 | 9 |
| 6.血圧コントロール不良 | 11 | 22 |
| 医学的イベント(A+B) | 52(25.5%) | 65(31.0%) |
- 脳心血管合併症による中止までの累積継続率をみると,両群間に有意差は認められなかった。
(Hypertension 1999;34:1131 より一部改変)
- 副次イベントによる中止までの累積継続率は,log−rank検定,Wilcoxon検定のいずれでもN群で有意に高かった。
Wilcoxon検定において「p値が低い」ことは,試験の早期に差が出ていることを示す。
(Ther Res 2001;22:271)
- 医学的イベントによる中止までの累積継続率は,log−rank検定ではN群で高い傾向があり,Wilcoxon検定ではN群で有意に高かった。
Wilcoxon検定において「p値が低い」ことは,試験の早期に差が出ていることを示す。
(Ther Res 2001;22:271)
- 老年者高血圧に対するCa拮抗薬ニカルジピン徐放剤長期投与の脳心血管合併症予防効果は,利尿薬トリクロルメチアジドと同等であった。
- 血圧コントロール不良や副作用を合わせた副次イベントの発生はN群でより少なく,すべての医学的イベントについてもN群で少ない傾向がみられた。
- Ca拮抗薬は利尿薬に比べて血圧コントロールが容易で忍容性が高いと考えられる。
長期の降圧薬治療において「忍容性が高い」ということは,QOLの面からも非常に重要な要素である。
